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iDeCoは破産しても資産を残せる

iDeCoのメリットは差押禁止財産であること

老後に備えて積立投資を始めようとすると、NISAとiDeCoのどちらを優先した方がよいのか悩むでしょう。
NISAと比較したときのiDeCoのメリットは、節税効果が期待できることとと差押禁止財産であることです。この内、差押禁止財産であるということは、非常に大きなメリットで「合法的な財産隠し」と称されることもあります。
iDeCoは、法律で差押禁止財産と規定されています(確定拠出年金法32条、第73条)。差押禁止財産ということは、強制執行の対象にならないということです。加入者が負債を返済することができなくなり、業者から裁判を提起されるような状況になったとしても、業者がiDeCoに対して強制執行をすることはできません。

iDeCoは破産財団にならない

差押禁止財産であることのメリットが顕著になるのは、破産したときです。破産したときは、原則として破産した人のすべての財産が破産財団、つまり破産した人にお金を請求する人で山分けにする財産になります(破産法第34条1項)。ですが、差押禁止財産は、破産財団にはならず(破産法第34条3項2号)、破産手続きを経ても破産した人に残ります。

具体例で考える

といっても、破産手続きを知らない人にとっては何のことかわからないと思いますので、具体例を挙げてみます。法制度の変更がからむとややこしくなりますから、2023年現在のNISAとiDeCoがずっと続いているという前提で考えてみます。

Aさんは、25歳で個人事業主として独立してから、老後に備えて毎月3万円を積立投資していました。Aさんが55歳のとき、大口の売掛先の倒産が原因で資金がショートして倒産し、自己破産を申立てました。金融機関から借入や買掛先への支払を含めると、負債総額は1億円になりました。Aさんは、24歳から55歳までの30年間積立投資を継続していました。

この場合、Aさんの積立投資はどうなるのでしょうか。積立元本は、毎月3万円を30年間ですから、1080万円です。年平均リターンが5%であれば、積立金額は2497万円になります(複利の力は偉大です)。この積立投資がどうなるのか、NISAのときとiDeCoのときとで比較してみます。

NISAのときはどうなる?

積立投資がNISAの場合、ほぼ全額が破産財団になります。
NISAは、所得税や住民税は特別扱いされていますが、破産手続上は通常の株式や積立投資と同様に扱われます。破産すると、原則として解約され、その全額が破産財産になります。
破産法では、自由財産という考え方があり、当面の生活に必要な一定の財産は自由財産として破産財団にならないというルールがあります。どこまでが自由財産になるのかは各地の裁判所の運用によって異なりますが、極めて例外的な場合を除けば、99万円を超える財産に関して自由財産と認められることはありません。
先程のAさんの例でも、99万円は破産手続きが終わっても手元に残る可能性がありますが、99万円を超える分、つまり2398万円は破産財団になります。30年間積立投資が水の泡になるのです。

iDeCoのときはどうなる?

積立投資がiDeCoの場合、2497万円の全額がAさんに残ります。先程の通り、iDeCoは差押禁止財産であり、破産財団にならないからです。
Aさんは、破産手続きを無事に終えると、1億円の負債を返さなくてもよくなあります。その上で、60歳になると2497万円(とその後の運用益)のiDeCoを満額受け取れるのです。iDeCoが「合法的な財産隠し」と言われる所以です。

iDeCoのデメリットは60歳まで受け取れないこと

逆に、iDeCoのデメリットは、60歳まで受け取れないことです。
先程のAさんの例では倒産する前提でしたが、積立投資がNISAの場合、本来であれば解約して2497万円を当面の支払にあてることができます。この支払で倒産を免れることができれば、積立投資は失いますが、自宅等の他の財産を守れました。
積立投資がiDeCoの場合、解約して当面の支払にあてるという選択肢がありません。