お金のはなしをするよ

お金のはなしをゆるゆるとしています。

このブログではアフィリエイト広告を利用しています。

「NISA vs iDeCo 積立するならどっちがお得?おすすめの銘柄は?」

はてなブックマークで「NISA vs iDeCo 積立するならどっちがお得?おすすめの銘柄は?」という記事が話題になっていました。
www.risingbull.co.jp
このテーマは、ウェブでは定期的に話題になっています。可能であれば両方やるべきではありますが、NISAとiDeCoの両方を満額積み立てるのは資金的に大変です。2024年にNISAの枠が大幅に拡大されてからは尚更です。限られた資金の中でNISAとiDeCoのどちらを優先するのかは考えなければなりません。
基本的には、記事の通り、60歳までの間に使う可能性があるお金はNISA、60歳までの間に使う可能性がないお金はiDeCoに積み立てることになります。
NISAの最大のデメリットは、60歳になるまで現金化できないことです。結婚、妊娠、出産、転職、自宅購入、子どもの教育資金等で使う可能性があるお金はiDeCoではなく、NISAにしなければなりません。
60歳までの間に使う可能性がないお金持ちは、iDeCoにした方が「お得」です。掛金が全額所得控除されるからです。記事では言及されていませんが、iDeCoには差押禁止財産であるというメリットがありますから、自己破産したときにも老後の資金は確保されます。
pixiu2023.com
結局のところ、60歳までの間に日々の収入から賄えない大きな支出がどれくらいあるのか、ということでしょう。その人の、現在の職業、今後の転職の見込み、結婚するのか、子どもを産むのか、子どもの人数、進学先、自宅を購入するのか等の様々な要因によって、その人にとってNISAとiDeCoのどちらを優先するのかが変わってきます。このテーマには、全員に共通する正解がありません。だからこそ、ウェブでは定期的に話題になっているのでしょう。

複利効果は『ドラえもん』で学んだ

投資をしている人は、複利効果が大好きです。
私が複利効果を知ったのは、幼いときに漫画『ドラえもん』を読んだときでした。

「ボーナス1024倍」

ドラえもん』には、複利効果を題材にしたエピソードがいくつかあります。ウェブ上でよく話題になるのは、「ボーナス1024倍」(『藤子・F・不二雄大全集ドラえもん(3)』収録)です。

のび太は、パパのボーナスで新しい自転車を買ってもらう約束をしていました。ところが、パパとママがボーナスの使い道を計算したところ、自宅の修理費等にお金がかかることがわかり、パパから「自転車はまたこんどな」とごまかされてしまいます。自転車を諦められないのび太は、ドラえもんに「ボーナスをふやす機械はないかしら」と尋ねます。ドラえもんが思いついたすごい方法は、「銀行にあずける」でした。
銀行に預けると、定期預金では10年で倍、20年で4倍、30年で8倍となり、100年で1024倍になります。「100年後じゃいみないよ」と呆れるのび太に対して、ドラエもんは「わすれてやしませんか。「タイムマシン」があることを」と言うのです。ボーナスを定期預金にして100年後に今すぐ取りに行けばよいのです。
ドラえもんはパパのボーナスを無断で持ち出し(!)、銀行に100年間の定期預金にして、100年後の未来に取りに行きます。
複利効果と預金の大切さを印象づけるエピソードでした。ですが、この方法は現在ではタイムマシンがあっても不可能です。定期預金が10年で倍ということは、1年あたりの利息が7パーセントを超えている必要があります。現在の日本の都市銀行では、定期預金の利息が年0.002パーセント程度ですから、100年間預けてもほとんど増えません。

「フエール銀行」

先程の「ボーナス1024倍」では、「ボーナスをふやす機械はないかしら」と聞くのび太に「そんなのがあれば苦労しないよ」とドラえもんが答えていました。後に「ボーナスをふやす機械」が登場するエピソードが登場します。「フエール銀行」(『藤子・F・不二雄大全集ドラえもん(12)』収録)です。

のび太は、お年玉の残りが10円になってしまい、無駄遣いをしたことを後悔していました。そんなのび太を見て、ドラえもんひみつ道具「フエール銀行」を取り出します。
フエール銀行にお金を預けると利息がつきます。利息は1時間あたり10パーセントです。10円が1時間後には11円、2時間で12円10銭、3時間で13円31銭、8時間で倍になり、1日で約100円、1週間で約9000万円になります。
さらに、定期預金にすると金利が上がり、1か月定期で1時間あたり20パーセント、1年定期で1時間あたり50パーセントです。ただし、定期預金にすると、途中解約ができません。
「フエール銀行」には貸出し機能もあり、お金を借りることができます。借りたときの金利は、1時間に20パーセントです。のび太は、預金でお金が増えるのを待つことができず、「利子をとられるといっても、お金がなければとられようがないじゃないか」と5000円を借りてしまいます。
複利効果と預金の大切さに加えて、無計画な借金の怖さがわかるエピソードです。

バイバイン

複利効果の強烈さをもっとも印象づけたのは、「バイバイン」(『藤子・F・不二雄大全集ドラえもん(8)』収録)でしょう。

のび太は、1個のくりまんじゅうを目の前にして、くりまんじゅうは食べるとうまいけれどなくなる、食べてもなくならなようにできないものかと悩んでいます。ドラえもんは、ひみつ道具バイバイン」を取り出します。
バイバイン」はなんでも増やす薬です。対象の物にバイバインを1滴垂らすと、5分ごとに数が倍になります。1個のくりまんじゅうは、始めの5分で2個になり、次の5分で4個になります。
のび太は、1つ残しておけばいつまでも食べ続けられると、くりまんじゅうを食べ続けますが、お腹が一杯になり食べられなくなります。ジャイアンスネ夫を家に呼んでくりまんじゅうを食べてもらいますが、それでも食べきれず、残ったくりまんじゅうを庭のポリバケツに捨ててしまいます。
のび太ドラえもんに残さず食べたと嘘をつきます。ドラえもんが言うには、くりまんじゅうが残っていたら大変なことになっていたというのです。1個のくりんまんじゅうが5分ごとに倍になると、1時間で4096個、2時間で1677万7216個、それから15分で1億個を超し、1日で地球がくりまんじゅうの底にうまってしまいます。
のび太から打ち明けられたドラえもんは、ポリバケツから溢れる大量のくりまんじゅうを目にして「えらいことをしてくれた!」と飛び上がります。
くりまんじゅうで地球が滅亡しかけるというシチュエーションのおかしさと複利効果の強烈さが相まって、忘れられないエピソードです。

iDeCoは破産しても資産を残せる

iDeCoのメリットは差押禁止財産であること

老後に備えて積立投資を始めようとすると、NISAとiDeCoのどちらを優先した方がよいのか悩むでしょう。
NISAと比較したときのiDeCoのメリットは、節税効果が期待できることとと差押禁止財産であることです。この内、差押禁止財産であるということは、非常に大きなメリットで「合法的な財産隠し」と称されることもあります。
iDeCoは、法律で差押禁止財産と規定されています(確定拠出年金法32条、第73条)。差押禁止財産ということは、強制執行の対象にならないということです。加入者が負債を返済することができなくなり、業者から裁判を提起されるような状況になったとしても、業者がiDeCoに対して強制執行をすることはできません。

iDeCoは破産財団にならない

差押禁止財産であることのメリットが顕著になるのは、破産したときです。破産したときは、原則として破産した人のすべての財産が破産財団、つまり破産した人にお金を請求する人で山分けにする財産になります(破産法第34条1項)。ですが、差押禁止財産は、破産財団にはならず(破産法第34条3項2号)、破産手続きを経ても破産した人に残ります。

具体例で考える

といっても、破産手続きを知らない人にとっては何のことかわからないと思いますので、具体例を挙げてみます。法制度の変更がからむとややこしくなりますから、2023年現在のNISAとiDeCoがずっと続いているという前提で考えてみます。

Aさんは、25歳で個人事業主として独立してから、老後に備えて毎月3万円を積立投資していました。Aさんが55歳のとき、大口の売掛先の倒産が原因で資金がショートして倒産し、自己破産を申立てました。金融機関から借入や買掛先への支払を含めると、負債総額は1億円になりました。Aさんは、24歳から55歳までの30年間積立投資を継続していました。

この場合、Aさんの積立投資はどうなるのでしょうか。積立元本は、毎月3万円を30年間ですから、1080万円です。年平均リターンが5%であれば、積立金額は2497万円になります(複利の力は偉大です)。この積立投資がどうなるのか、NISAのときとiDeCoのときとで比較してみます。

NISAのときはどうなる?

積立投資がNISAの場合、ほぼ全額が破産財団になります。
NISAは、所得税や住民税は特別扱いされていますが、破産手続上は通常の株式や積立投資と同様に扱われます。破産すると、原則として解約され、その全額が破産財産になります。
破産法では、自由財産という考え方があり、当面の生活に必要な一定の財産は自由財産として破産財団にならないというルールがあります。どこまでが自由財産になるのかは各地の裁判所の運用によって異なりますが、極めて例外的な場合を除けば、99万円を超える財産に関して自由財産と認められることはありません。
先程のAさんの例でも、99万円は破産手続きが終わっても手元に残る可能性がありますが、99万円を超える分、つまり2398万円は破産財団になります。30年間積立投資が水の泡になるのです。

iDeCoのときはどうなる?

積立投資がiDeCoの場合、2497万円の全額がAさんに残ります。先程の通り、iDeCoは差押禁止財産であり、破産財団にならないからです。
Aさんは、破産手続きを無事に終えると、1億円の負債を返さなくてもよくなあります。その上で、60歳になると2497万円(とその後の運用益)のiDeCoを満額受け取れるのです。iDeCoが「合法的な財産隠し」と言われる所以です。

iDeCoのデメリットは60歳まで受け取れないこと

逆に、iDeCoのデメリットは、60歳まで受け取れないことです。
先程のAさんの例では倒産する前提でしたが、積立投資がNISAの場合、本来であれば解約して2497万円を当面の支払にあてることができます。この支払で倒産を免れることができれば、積立投資は失いますが、自宅等の他の財産を守れました。
積立投資がiDeCoの場合、解約して当面の支払にあてるという選択肢がありません。

詐欺の被害にあったときの弁護士の探し方2

先日の投稿で、東京弁護士会の「国際ロマンス詐欺案件を取り扱う弁護士業務広告の注意点」を紹介しました。
その後、8月7日に東京弁護士会が「国際ロマンス詐欺案件を取り扱う弁護士業務広告の注意点2」という文章を公開しました。
www.toben.or.jp
弁護士会が法律事務所の広告に関してここまで踏み込んだ文章を公開することは、めずらしいのではないでしょうか。それだけ国際ロマンス詐欺案件で法律事務所による二次被害が多発しており、弁護士会としても容認できない状態になっていると思われます。
国際ロマンス詐欺にかかわらず、他の分野の案件でも、これから弁護士に相談、依頼することを考えている人は目を通した方がよい文章です。長文で読むのが大変だという人は、次の文章だけでも心に留めてください。

結論から先に言えば「依頼する際、その弁護士の法律事務所に行き、その弁護士に現実に会い、その弁護士から直接かつ詳細に説明を聞き、紙の委任契約書に署名押印する。」これを守るだけで、被害に遭う確率を大幅に低減できます(一旦持ち帰って、家族や友人知人や他の弁護士にも相談してみる、そこまでやればさらに確実です)。

国際ロマンス詐欺案件を取り扱う弁護士業務広告の注意点2 - 東京弁護士会

ここまで読んでいただいた方に向けて付け加えるなら「インターネットで大々的に広告をしている弁護士が悪い弁護士であるという必然性はないが、非弁提携弁護士はインターネットで大々的に広告をしている」ということです

国際ロマンス詐欺案件を取り扱う弁護士業務広告の注意点2 - 東京弁護士会

インターネットで広告をしている弁護士の中に悪い弁護士がいるのであれば、どのように弁護士を探せばよいのかということになると、先日の投稿の繰り返しになりますが、投資詐欺等であれば東京の弁護士会が運営している法律相談センターの消費者相談がよいでしょう。
www.horitsu-sodan.jp
弁護士会の法律相談センターでは、その日の担当弁護士が相談者と対面で法律相談を行います。この時点でもっぱら事務員が対応している非弁提携事務所とは違います。

詐欺の被害にあったときの弁護士の探し方

はてな匿名ダイアリーで投資詐欺の被害にあったという投稿が話題になっていました。その後、投稿したkiku-chanさんが投資詐欺等の詐欺の被害にあったときの相談先をまとめていました。
anond.hatelabo.jp
内容には特に異論がないのですが、弁護士への相談に関して私の知っている限りで補足します。

法律事務所のウェブサイトには注意

kiku-chanさんの投稿に弁護士事務所による二次被害も報告されていますとありますが、これは事実です。
例えば、東京弁護士会は、国際ロマンス詐欺案件について、「国際ロマンス詐欺案件を取り扱う弁護士業務広告の注意点」という文章を公開しています。その中で、国際ロマンス詐欺案件を取り扱うとする法律事務所のウェブサイトの中には、弁護士法や弁護士職務基本規程に違反するおそれがあるものが散見される、としています。
www.toben.or.jp
宣伝広告に関する規程に違反しているだけではなく、事件処理に問題があると思われるケースもあるようです。

なお、当本部広告調査部会による調査の過程で、国際ロマンス詐欺の被害回復は現実には難しく、多くの場合、被害を全く回収できないか、ごく少額の回収にとどまることが多いのに、弁護士に依頼すれば高額の回収が確実であると誤信させるような弁護士業務広告をしていたケースも散見されました。
このようなケースでは、依頼者から、事件処理の報告がない、事件処理の進捗や今後の見通しについて弁護士に説明を求めたのに対応がない、高額回収ができるとの説明をうけていたのに着手金倒れになった、といった苦情が市民窓口に寄せられ、調査の端緒となっています。

国際ロマンス詐欺案件を取り扱う弁護士業務広告の注意点 - 東京弁護士会

弁護士会の公開している文章ですから、慎重に表現は選んでいますし、特定の事務所を名指しすることはありませんが、ウェブで派手な宣伝広告をしている法律事務所には注意するように弁護士会が遠回しに呼びかけているのです。

どの弁護士に相談すればよいのか

ウェブの宣伝広告があてにならないのであれば、弁護士をどのように探せばよいのでしょうか。
東京とその近郊の方であれば、東京の弁護士会が運営している法律相談センターの消費者相談がよいでしょう。相談担当者の専門性と弁護士費用の適正が担保されているからです。
www.horitsu-sodan.jp
相談担当者の専門性については、投資詐欺等の消費者問題は常に新しい手口がでてきますから、最新の状況をフォローしている弁護士でなければ対応できません。そのため、消費者相談では、消費者問題を普段から取り扱っている弁護士が相談を担当することになっています。東京弁護士会消費者問題特別委員会のサイトには、次のように書かれています。

そこで、消費者問題法律相談は、弁護士会法律相談センターの特別相談として実施されています。 また、法律相談における回答の適正化と相談担当者の研鑽を目的として、①法律相談を主担当と副担当の2名 一組体制で担当するとともに、②毎月1回、「消費者問題法律相談事例検討会」を実施しています。 また、消費者問題法律相談担当希望者向けの研修会を毎年実施しています。

消費者問題特別委員会 トップページ - 東京弁護士会

主担当と副担当の2名一組体制で担当しており、主担当が消費者問題のベテランの弁護士、副担当がこれから消費者問題を取り組もうとする比較的経験の浅い弁護士のことが多いようです。このような2名一組体制で、消費者問題の経験や知識が乏しい弁護士が一人で相談を担当することがないようにしています。また、毎月の法律相談事例検討会で、相談担当者間で最新の情報を共有しています。
弁護士費用については、東京の弁護士会の法律相談センターでは弁護士費用に関する基準があり、法律相談センターでの相談から弁護士が受任するときには、法律相談センターの基準に従って契約をすることになっています。事件の内容からしてあまりにも高額な着手金を請求されるということはありません。
東京の法律相談センターでは、このように相談担当者の専門性と弁護士費用の適正を担保する仕組みが整っていますから、どの弁護士に相談すればよいのか見当がつかないのであれば、まずは東京の法律相談センターに行ったほうがよいと思います。